下肢深部静脈血栓症

下肢深部静脈血栓症とは

静脈は、全身の各所で使用された血液を心臓に戻す血管です。下肢深部静脈血栓症とは、足や骨盤の深い部分にある静脈に血の塊(血栓)が生じる状態です。静脈に血栓が生じ、血管を閉塞させると、流れの上流側(足先側)に血液が停滞し、その部分の足がパンパンになります。足がパンパンにならなくても、血栓による炎症のため、ふくらはぎに痛みを感じる場合もあります。また、血栓が血液の流れに乗って、肺に流れると、肺動脈を閉塞させ、呼吸困難や胸痛、血栓の量が多いと身体全身の血液の流れが障害されるため、ショック状態に陥り、命を失う場合もあります。下肢深部静脈血栓症は、初期に適切な治療を受けないと、慢性静脈不全といわれる慢性的な足のむくみ、静脈瘤、湿疹、皮フ潰瘍などを発症し、生活の質が著しく低下する場合がありますので、適切な医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。

下肢深部静脈血栓症の原因

静脈内に血栓ができる要因は主に3つあるといわれています。1つ目は静脈の血流が停滞すること、2つ目は血液が固まりやすい(血液凝固亢進)状態になること、3つ目は静脈の血管壁に傷がつくことです。血流停滞の原因としては寝たきりや長時間の座位(飛行機など)などがあげられます。血液凝固亢進は悪性腫瘍、ピルなどのホルモン剤、手術や血液の固まりやすい体質などがあげられ、血管壁に傷がつく状態は、足のケガや喫煙などがあげられます。

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に 関するガイドライン(JCS2017年改訂版)

下肢深部静脈血栓症の症状

下肢深部静脈血栓症でよくみられる症状

など

血栓が肺に詰まった場合の症状

など

深部静脈血栓症の検査

血液検査

Dダイマー

体内に血の塊(血栓)が存在すると上昇します。当クリニックでは、10-15分程度で結果が出ます。

血栓性素因

血栓ができやすいかどうかを血液検査で調べることが可能です。当院でチェックする主な病気は下記になります。保険範囲内での検査のため、すべての検査をできるわけではありません。

  • 抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント(抗リン脂質抗体症候群)
  • プロテインS活性(プロテインS欠乏症)
  • プロテインC活性(プロテインC欠乏症)

など

下肢静脈超音波(エコー)検査

足の静脈の流れと血栓をチェックすることができます。腹部は、腸のガスなどが邪魔するため、腹部の静脈の観察では正確に観察できない場合があります。

心臓超音波検査

肺の動脈に大きな血栓が詰まると、右心室が拡張したり、肺動脈の血圧が上昇したりします。心臓超音波検査では、右心室の拡張や肺動脈の血圧をチェックすることが可能です。

造影CT検査

超音波検査が不得意な腹部の静脈や肺動脈の血栓を、一度の検査で調べることができます。造影剤を使用するため、アレルギー体質の方や腎機能が低下している方は、検査を行うかどうかを慎重に検討する必要があります。当クリニックにはCT装置がないため、他医療機関へ紹介致します。

下肢深部静脈血栓症の治療

薬物療法

抗凝固療法(こぎょうこりょうほう)

血液をサラサラにして、新たな血栓をできないようにする薬剤です。通常は、できたしまった血栓は、体に備わっている力で自然に溶けてしまうため、新しい血栓ができなければ、血栓は自然と縮小し、消失します。

血栓溶解療法

できた血栓を溶かすための薬剤です。肺動脈に大量の血栓が詰まった場合に使用します。


抗凝固療法は、血栓が新しく形成されるのを抑える治療です。線溶療法は、できてしまった血栓を溶かす治療です。通常は、血栓が形成されるのを抑えておけば、自身に備わっている血栓を溶かす働きにより、血栓はなくなっていきます。しかしながら、肺動脈に大きな血栓が詰まった場合には、できるだけ速く血栓を小さくする必要があるため、線溶療法を行う場合があります。

下大静脈フィルター

お腹の近くの太い静脈にできた大きな血栓が、肺動脈に移動し、詰まらせるのを防ぐためのものです。多くは細い金属でできた骨組みを傘状にしたものです。足の付け根あるいは首の静脈からカテーテル(医療用に用いられる細い管)を使用して、お腹の静脈(下大静脈)に留置します。

その他の治療

薬物療法で改善しない大きな血栓や足の高度の血流障害の原因になっているお腹に近い静脈にできた大きな血栓は、カテーテル治療といわれる、医療用に用いられる細い管を使用して、血栓を溶かしたり、吸引したり、場合によってはステントという金属のパイプを留置することも行われています。また、足の付け根に切開を加えて、外科的に血栓を取り除く場合もあります。

【記事監修】
あさくさ橋心臓と血管のクリニック
院長 高橋 保裕

院長 高橋 保裕下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医https://www.jevlt.org/ja/

開院前に勤務していた大学病院や地域中核病院では、1万件近い心臓や末梢血管のカテーテル治療に携わり、様々な症例に対して豊富な治療経験を持ちます。
近年では「ライブデモンストレーションのライブオペレーター」として各学会に招待され、カテーテル治療を学ぶ多くの医師の前で治療を行うなど、技術指導者としても活動しています。
「患者様を自分のたいせつな家族と思って診療する」をモットーに、下肢静脈瘤日帰り手術(カテーテル治療)や一般循環器診療を行っております。

トップへ戻る