胸痛(胸の痛み)

【記事監修】
あさくさ橋心臓と血管のクリニック
院長 高橋 保裕

院長 高橋 保裕下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医https://www.jevlt.org/ja/

開院前に勤務していた大学病院や地域中核病院では、1万件近い心臓や末梢血管のカテーテル治療に携わり、様々な症例に対して豊富な治療経験を持ちます。
近年では「ライブデモンストレーションのライブオペレーター」として各学会に招待され、カテーテル治療を学ぶ多くの医師の前で治療を行うなど、技術指導者としても活動しています。
「患者様を自分のたいせつな家族と思って診療する」をモットーに、下肢静脈瘤日帰り手術(カテーテル治療)や一般循環器診療を行っております。

胸痛について

胸痛は胸が痛くなることです。心筋梗塞(しんきんこうそく)や狭心症、大動脈解離(だいどうみゃくが裂ける病気)などの重大な循環器の病気だけでなく、食道炎などの消化器疾患、気胸(肺に穴があく病気)などの呼吸器疾患、精神的ストレスよるものまで様々な原因で起こり得ます。ストレス社会を反映して、精神的ストレスを原因とする方が多くみられますが、なかには心筋梗塞などの重大な病気の方もいらっしゃいます。命やその後の生活に大きな影響を与える病気は、早い段階で対応することが必要となりますので、胸痛などの胸の周囲の症状が気になる方は、お気軽にご相談ください。

胸痛で疑われる病気

心臓の病気

など

 血管の病気

など

 呼吸器の病気

など

 消化器の病気

など

 整形外科的な病気

など

 皮フや乳腺の病気

など

 心因性

など

よくある病気

心臓の病気

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞では、胸部前面あるいは左肩や腕、胃のあたり(お腹の上の方)、ときには顎のあたりまでの痛みや締め付けられるような症状を自覚し、冷汗や今まで体験したことのないような命の危険を感じるような不安感を伴うことも多くあります。病状が重篤である場合には、心停止状態となり、意識を失ってしまう場合もあります。症状は通常、20分以上持続します。心筋梗塞を発症した場合、できるだけ早期に治療することが重要であるため、上記のような症状を自覚した場合には、迷わず救急要請することが大切です。また、チクチク感や数秒から数十秒しか持続しないような症状は、心臓を原因として起こっている可能性は低いとされています。

狭心症

狭心症には2つのタイプがあり、動脈硬化によって心臓の血管(冠動脈)が狭くなるタイプと心臓の血管が痙攣(けいれん)を起こし狭くなるタイプの2種類があります。両者とも症状の部位や性質は心筋梗塞と同様ですが、心筋梗塞と異なる点は、数分で症状が改善することです。動脈硬化性の狭心症では、歩いたり、階段を昇ったりなど心臓に負担のかかる運動をすると症状が出現します。それに対して痙攣のタイプの狭心症では、早朝安静時に症状が出現しやすい特徴があります(人によっては別の時間帯であったり、飲酒やストレスなどの何らかのイベントを契機に発作が出現する場合もあります)。狭心症は、命に関わる心筋梗塞へ移行する可能性のある病気であり、上記のような症状がありましたら、循環器専門のクリニックや病院へ速やかにご相談ください。当クリニックでもお気軽にご相談いただければ、速やかに対応致します。

急性心膜炎・心筋炎

急性心膜炎・心筋炎は多くの場合、ウイルスなどが心膜や心筋に感染して、炎症を起こす病気です。炎症により胸の痛みを生じる場合がありますが、心膜炎の場合には、息を吸うと痛みが増強したりすることがあります。また、ウイルス感染が原因の場合には、かぜの症状が先行することが多いとされています。心筋に炎症が波及した場合には、重症な不整脈や心臓のポンプ機能が著しく低下し、心停止に至る場合もあります。かぜを引いている時に、胸の痛みがあるような場合には、速やかに循環器専門医を受診しましょう。

血管の病気

急性大動脈解離

急性大動脈解離は、大動脈の壁を構成する3つの層の一部が剥がれてしまう病気です。症状は、突然の胸や背中の痛みであり、剥がれた部位が伸展すると痛みの部位が移動するのも特徴です。胸や背中の痛みに伴い、冷汗を伴ったり、意識を失う場合もあります。剥がれた部位が心臓に近い場合や広範囲に及ぶ場合には、非常に危険な状態になるため、迷わず救急要請することが重要です。コントロールされていない高血圧や大動脈の病気を血縁の家族が有している方は要注意です。

肺動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)

様々な原因で脚などの静脈にできた血栓が肺の動脈に詰まってしまう病気です。脚に多量の血栓ができ、血管を閉塞した場合には、血栓ができた脚がパンパンに浮腫む(むくむ)ことがあります。肺の動脈に血栓が詰まると、胸の痛みや呼吸困難の症状を訴えます。肺の動脈に詰まった血栓が大きいと意識を失ったり、心停止に至る場合もあります。長時間脚を動かさなかった後に(飛行機搭乗後、手術後、脚の骨折後など)、上記のような症状がみられた場合には、肺動脈血栓塞栓症を疑う必要があり、命に関わる病気であるため、迷わず救急要請することが重要です。

呼吸器の病気

気胸

気胸は肺に穴があき、肋骨と肺の間に空気が溜まった状態です。若い痩せ型の男性や肺気腫や肺がんなど肺の病気のある高齢者に多くみられるのが自然気胸、交通事故などで胸を打撲した時に発生するのが外傷性気胸、女性で生理の前後にみられるのが月経随伴性気胸と呼ばれています。気胸になると持続的な胸の痛みを自覚するようになり、重症になると呼吸困難を伴います。重症度はX線検査やCT検査で判断できますので、気胸を疑った場合には、速やかに内科、呼吸器内科・外科などを受診してください。

消化器の病気

消化器の病気で食道を原因とする胸の痛みは、狭心症や心筋梗塞の症状に似ています。逆流性食道炎等を原因とする場合は、仰向け状態や食後に、胸の痛みや胸焼けの症状が現れます。飲料水や制酸剤の服用によって、症状は軽くなる特徴があります。

神経・筋肉・骨の病気

肋骨骨折

肋骨骨折とは、激しい運動や咳、外傷等によって、肋骨にひびが入ったり、折れたりする状態です。痛みの部位を押したり、深呼吸や咳、体の位置を変えた際には、さらに強い痛みを生じます。心臓や肺など内臓の病気の場合には痛みの部位を押しても痛みは増強しません。

皮フの病気

帯状疱疹

帯状疱疹は、小児では馴染みのある水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。体の片側の神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれがみられます。症状の多くは胸部に現れることが多いですが、顔面や頭部にも現れることがあります。通常、水ぶくれがみられる前に痛みが生じます。その後、皮フ症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しい場合があります。多くの診療科で初期診断をすることが可能ですが、初期には皮フ症状がみられないため、診断することができない場合があります。胸の痛みの経過中に、赤い斑点や水ぶくれがみられた場合には、帯状疱疹が疑われますので皮フ科を受診しましょう。最近では、帯状疱疹の発症を効果的に予防してくれるワクチンがあります。当クリニックでも接種可能ですので、お気軽にご相談ください。

胸痛に関する検査

血圧や脈拍、呼吸、体温、意識レベル等のバイタルサインが安定している際には、身体初見と問診を行います。この際、年齢やこれまでにかかったことのある疾患、合併症の有無も確認させていただきます。しっかりと身体所見や問診を行った上で、呼吸器疾患もしくは循環器疾患の疑いがあれば、さらに検査を進めていきます。一方、バイタルサインに異常がある際には、速やかに問診を行います。死に至るような深刻な疾患の可能性があるため、早急に酸素吸入や静脈確保、動脈血液ガス分析、心電図モニターを装着していきます。

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