下肢静脈瘤は、足の静脈内で発生する血流の停滞や逆流などが原因で起こる血管のボコボコした拡張や、足のだるさ、足のつり(こむら返り)などを伴う病気です。
良性の病気ですので、歩けなくなったり、命に関わることはありませんが、症状を改善するためには医療機関での治療が必要です。
ここでは、下肢静脈瘤の治療法にはどんな方法があるのか、またそのメリット・デメリットについて紹介します。
下肢静脈瘤の治療リスクや病院選びのポイントについても解説していきますので、治療を迷っている人や、治療を受けたいと思っている人はぜひ参考にしてください。
下肢静脈瘤の治療法 - メリット・デメリットの紹介
下肢静脈瘤は、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状になる状態を指し、その治療法にはさまざまな選択肢があります。
軽度の静脈瘤の場合、生命に直接的な影響はないため、通常はストッキングなどを使用して血液の滞留を最小限に抑え、症状の緩和と将来の進行予防が一般的です。
症状が顕著であったり、皮膚に障害が現れている場合は、手術による治療が検討されます。
ここでは、幅広い治療方法ごとの適用、メリットやデメリットを詳しく解説しています。
弾性ストッキング
弾性ストッキングは弾力性のある特殊なストッキングです。
全体的に締め付け、圧が強いですが、足首から上方に向かって徐々に圧力を下げていくことで、静脈の流れを改善します。
非常にきついタイプのストッキングであり、手の力がない方は着用できない場合があります。着用により脚の症状は軽減することが多いですが、根本的な治療法ではありません。
弾性ストッキングには、市販用と医療用があります。市販用では、多くは圧迫圧が15mmHg以下の低圧です。一方、医療機関では繊維の編み方が工夫された高い圧迫圧のものを扱っています。医療用は市販用と比較して、価格は高いですが市販のものよりも耐久性に優れており、医師が使用目的に合わせて、提案させて頂くためメリットも感じられると思います。最初は着用しにくいと感じられるかもしれませんが、正しく着用して効果を期待しましょう。
弾性ストッキングによる治療のメリット、デメリットは以下のとおりです。
弾性ストッキングによる治療のメリット
- ストッキングの着用だけであり、手軽である
- 手術のように費用がかからない
(通常タイプのもので一足4,000円~5,000円程度)
弾性ストッキングによる治療のデメリット
- 効果を得られるのは、着用当日のみである
- 皮膚のトラブルを起こしてしまう場合がある
- 腓骨神経麻痺を起こす場合がある(膝下の外側にしびれや痛みがでます)
- 足の動脈硬化が高度な場合には着用により足への動脈血流が妨げられる場合がある
硬化療法
主に小さな静脈瘤に対して行います。静脈内にフォーム硬化剤という薬剤を非常に細い注射針で注入することにより血管を固めてしまう治療法です。
治療自体は比較的単純な治療法ですが、リスクとしては、薬剤の注入部位に色素沈着が見られることがあります。
硬化療法による治療のメリット
- 保険が適用される
- 細い針で注射をするだけの比較的簡単な治療
- 治療後の生活の制限が少ない
硬化療法による治療のデメリット
- 注射した部位に色素沈着が一定期間残ることがある
- 薬剤によるアレルギーや皮膚潰瘍を起こす場合がある
- 再発しやすい
血管内焼灼術(レーザー,高周波治療)
血管内焼灼術は、レザーカテーテルあるいは高周波カテーテルにより伏在静脈を熱で焼くことで伏在静脈に血液が流れないようにする治療法です(焼くときには痛みはほとんどなく、局所麻酔薬を注入するときに痛みがあります)。伏在静脈に流入できなくなった血液は脚の中心近くを通る丈夫で高性能な深部静脈を介して心臓に戻ることで足の循環を改善します。日帰りで行うことができますが、治療後2週間は弾性ストッキングを着用します。
血管内焼灼術による治療のメリット
- 局所麻酔のみで手術を行えるため、身体への負担を最小限に行うことが可能
- グルー血管内塞栓術のように接着剤を使用せず、体内に残る異物がないため、アレルギーや炎症、難治性の細菌感染のリスクは非常に少ない
血管内焼灼術による治療のデメリット
- 治療後2週間は弾性ストッキングを着用する必要がある
- 頻度は少ないが、手術後の静脈血栓症(エコノミークラス症候群)や足の神経損傷のリスクがある
血管内塞栓術(グルー治療)
グルー(glue)は英語で接着剤を意味します。文字通りグルー血管内塞栓術とは、下肢静脈瘤の原因になっている伏在静脈に医療用の瞬間接着剤を入れて、血管を閉塞する治療法です。
血管内塞栓術による治療のメリット
- 局所麻酔のみで手術を行えるため、身体への負担を最小限に行うことが可能
- 血管内焼灼術のように熱によって足の神経を損傷させるリスクがない
血管内塞栓術による治療のデメリット
- 接着剤による静脈炎が起こる可能性がしばしばあり、痛みを伴うことがある
- 接着剤によりアレルギーを起こす場合がある。通常は抗アレルギー薬の内服と時間経過で改善することが多い
- 接着剤に細菌感染が起こる場合があり、接着剤を外科的に抜去しなければいけなくなる場合がある
下肢静脈瘤に治療リスクはある?
治療や手術では、一定のリスクの可能性があります。
下肢静脈瘤の治療で一般的に起こりうるリスクでは、以下のものがあります。1つずつ見ていきましょう。
- リスク① 深部静脈血栓症
- リスク② 神経障害
- リスク③ 静脈炎
- リスク④ 術後疼痛、内出血
- リスク⑤ 色素沈着
- リスク⑥ 薬剤アレルギー
リスク①深部静脈血栓症
エコノミークラス症候群とも言います。
下肢の奥にある静脈に血栓ができて足が腫れたり、血栓が肺の血管を閉塞し呼吸困難(肺梗塞)を生じることがあります。
大きな血栓が肺の血管を閉塞した場合には命に関わることがあり、入院治療が必要となります。
リスク②神経障害
血管と神経は部分的に横並びで走行する部分があります。
主に血管内焼灼術で血管に熱を加えたときに、隣にある神経に長時間熱が加わってしまったときに起こります。慢性的なしびれや痛み、足をうごかせなくなるなどの症状が現れます。
ただし、局所麻酔で治療を受けている場合には神経に熱が伝わると強い痛みを感じますので、痛い時に我慢をせず、医師やスタッフに遠慮なく痛いことを伝えることが重要です。
短時間であれば、足をうごかせなくなるなどの生活に支障を来す、神経障害がの残る可能性はほとんどありません。
リスク③静脈炎
治療後に静脈に炎症が生じる場合があります。多くは一過性であり、消炎鎮痛薬(痛み止め)の服用で改善します。
焼灼術、グルー塞栓術どちらの治療でもみられることがありますが、グルー治療の方が多いと言われています。
リスク④術後疼痛、内出血
焼灼部位のひきつれ感は高頻度に認められますが、2-3ヶ月でほとんど感じなくなります。
ひきつれ感は、元々弾力のある血管が、焼灼により硬くなることが原因です。きちんと治療できている証拠でもありますので心配はいりません。
治療当日や翌朝にじんじんした痛みを感じる方がいらっしゃいますが、消炎鎮痛薬の服用で改善し、長期間持続することはありません。
内出血はしばしば認められますが、時間経過(3-4週間)で回復します。
リスク⑤色素沈着
焼灼部位に褐色の色素沈着が出現することがあります。徐々に薄くなってくることが多いですが、残存する場合もあります。
グルー治療ではほとんどみられない症状です。
リスク⑥薬剤アレルギー
手術時の薬剤によりアレルギーをおこすことがあります。
重度のアレルギーの場合は、血圧低下や心停止を生じることもあります。また、グルー治療では、治療に使用する接着剤自体でアレルギーを起こすことがあります。
ほとんどは抗アレルギー薬の服用で改善しますが、接着剤は永続的に体内に残るため、希に治療に難渋する場合もあります。
下肢静脈瘤の病院選びのポイント
下肢静脈瘤の治療を行う病院・クリニックの中でいくつか候補がある場合、どのような判断基準で選べば良いかポイントを紹介します。
紹介するのはあくまでも目安となりますので、受診を検討中の医療機関で治療を受けたことのある知人への話や、かかりつけ医への相談、ホームページなどの情報を参照し、下肢静脈瘤の治療をどのように行っているかを事前に確認することが大切です。
ポイント①
タイプに合わせた治療方法
下肢静脈瘤は、原因や症状によっていくつかのタイプに分類され、それぞれのタイプや患者さまの身体の状態に合わせた治療方法の選択が必要となります。
治療を必要とせず経過観察になるタイプや、カテーテル治療や外科手術が必要になるものまで多岐に渡ります。
特に注意が必要なのは、現在の下肢静脈瘤治療の主流となっているカテーテル治療(レーザー、高周波、グルー治療)は、「下肢静脈瘤に対する血管内治療の実施基準」を満たした実施施設および実施医しか行うことはできません。
下肢静脈瘤実施管理委員会のホームページ(https://www.jevlt.org/ja/application/beadroll.html)でご確認することをおすすめします。
ポイント②
治療実績や症例数
ホームページで下肢静脈瘤の治療件数・実績や実施頻度を確認するのが良いでしょう。
年に数件しか行っていないような施設は、下肢静脈瘤治療の経験が少ない可能性があります。
また、治療件数が多すぎる施設も問題がある場合があります。
受診する医療機関を検討する際は、最新の下肢静脈瘤の診療状況だけでなく、医師の経歴や実績なども併せて確認することが大切になります。
ポイント③
持病がある場合に安心して治療を受けられる
心不全や心筋梗塞、弁膜症を有する方は、下肢静脈瘤治療により心臓に一時的に負担がかかる場合があります。
また、高血圧を有する方でも、心臓の動きが悪くなっている場合があり、下肢静脈瘤治療には注意が必要です。
このような場合には、循環器内科的な管理を行える医療機関を選択することが大切です。
まとめ
下肢静脈瘤の治療を主に行っているのは血管外科や心臓血管外科、循環器内科、皮膚科、形成外科ですが、医療機関を選ぶ上で大切なのは、下肢静脈瘤治療の主流であるカテーテル治療(血管内焼灼術、血管内塞栓術)に精通しているかどうかもっとも大切な観点であり、他に外科的治療を行う体制にあるかどうか、特殊な病態の場合などには大学病院などへの紹介を行っているかどうかも選択の基準に挙げられます。
また、自覚症状が下肢静脈瘤ではなかった場合などには適切な診療や他院への紹介をしてくれるかどうかも大切です。
下肢静脈瘤は良性の病気であり、治療を急ぐ必要はありませんので、じっくりと安心して治療を受けられる医療機関を選ぶことように心がけましょう。
当院では、「カテーテル治療」および「心臓・血管」の専門医による下肢静脈瘤の日帰り治療を提供しております。足の血管でお悩みの方は、東京都台東区「浅草橋駅」徒歩1分の「あさくさ橋心臓と血管のクリニック」までご相談ください。
当院の下肢静脈瘤が
選ばれる理由
Point
01
下肢静脈瘤の
専門医師による日帰り手術
当クリニック院長は、学会でも末梢血管のライブデモンストレーションを行うなど、下肢静脈瘤治療の基本となるカテーテル治療を得意としておりますので、ご安心してお受けください。
Point
02
痛みが少ない治療
下肢静脈瘤治療では、局所麻酔を効かせた状態で行いますので、術中に痛みを感じることはありません。麻酔を打つ際にチクッとした痛みを感じる程度です。
Point
03
土日も診療・治療実施
当クリニックでは、土日も診察・治療を実施しております。忙しくて平日の受診が難しい方も仕事などへの影響を最低限に抑えて通院いただくことができます。
Point
04
治療は保険適用
下肢静脈瘤の治療では、すべて保険が適用されます。さらに高額療養費制度や限度額認定証を提示することによって費用負担をさらに抑えることも可能です。
Point
05
症状に合わせて
複数の術式から治療法を選択
一言に下肢静脈瘤といっても、下肢静脈瘤には複数の種類があり、下肢静脈瘤の種類に応じて治療法が異なります。当院ではあらゆる治療に対応し、種類に応じて適した治療法のご提案が可能です。
【記事監修】
あさくさ橋心臓と血管のクリニック
院長 高橋 保裕
下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医(https://www.jevlt.org/ja/)
循環器専門医
心血管カテーテル治療専門医
開院前に勤務していた大学病院や地域中核病院では、1万件近い心臓や末梢血管のカテーテル治療に携わり、様々な症例に対して豊富な治療経験を持ちます。
近年では「ライブデモンストレーションのライブオペレーター」として各学会に招待され、カテーテル治療を学ぶ多くの医師の前で治療を行うなど、技術指導者としても活動しています。
「患者様を自分のたいせつな家族と思って診療する」をモットーに、下肢静脈瘤日帰り手術(カテーテル治療)や一般循環器診療を行っております。