下肢静脈瘤は、足の静脈内で発生する血流の停滞や逆流などが原因で、足の血管のぼこぼこした拡張や足のだるさ、足のつり(こむら返り)などを伴う病気です。
良性の病気のため、放置しても歩けなくなったり、命に関わることはありません。しかし、自然に治ることはないので、症状を改善するためには医療機関での治療が必要になります。
症状が現れて医療機関を受診しようとしても「下肢静脈瘤は何科へ行けば良いか」という疑問を持つ患者さまも多いと思います。
実際、下肢静脈瘤の治療を主に行っているのは血管外科や心臓血管外科、循環器内科であり、形成外科や皮膚科でも行っている場合もあります
特に、下肢静脈瘤の症状の1つである「浮腫」は、心臓や腎臓に関する病気の兆候ともなり得るため、全身の状態を内科的側面で診察可能な「循環器内科」で下肢静脈瘤の治療を受けることは患者さまにとって様々なメリットがあります。
この記事では、それぞれの診療科で行う下肢静脈瘤の治療の違いや、循環器内科で下肢静脈瘤の治療を受けるメリットを解説します。
複数の診療科で下肢静脈瘤の治療を行っている
下肢静脈瘤と同様、瘤(コブ)が現れる「粉瘤」のように形成外科を選択される方が多くいらっしゃいます。
また、下肢静脈瘤は湿疹、色素沈着、浮腫など皮膚上の見た目に症状が現れることから、皮膚科という選択肢を持つ方も少なくはありません。
下肢静脈瘤は血管の異常による血液の逆流が原因となっていることもあり、下肢静脈瘤の治療は血管外科や心臓血管外科、循環器内科で主に行なっています。
以下、それぞれの診療科における下肢静脈瘤治療の違いを紹介します。
血管外科・心臓血管外科での下肢静脈瘤治療
血管外科や心臓血管外科は、心臓バイパス手術や大血管の手術など、血管を全般的に扱っている「外科」の1つになります。総合病院の血管外科や、心臓血管外科では、より重篤な心臓や動脈の病気が優先され、良性な病気である下肢静脈瘤の治療を行っていない場合も見受けられます。
血管外科・心臓血管外科で下肢静脈瘤治療を受ける最大のメリットは、カテーテル治療以外の不全穿通枝に対する切離術や高位結紮術、ストリッピング手術などの外科的治療も得意としているところです。
循環器内科での下肢静脈瘤治療
心臓や血管の病気を専門とするだけでなく、内科として幅広い知見を持ち合わせ、全身の状態に合わせて総合的な診療や治療を可能とする「内科」の1つになります。
「カテーテル」を用いた治療は、循環器内科で行われることが多く、循環器内科医が得意とする心臓や下肢動脈のカテーテル治療は、非常に繊細な手技を要求されることから、手技的に容易な下肢静脈瘤のカテーテル治療も循環器内科の医師が行うことが多くなってきています。
形成外科・皮膚科での下肢静脈瘤治療
形成外科や皮膚科でも下肢静脈治療を行う場合がありますが、これらの診療科は通常、下肢静脈瘤治療で最も頻繁に行われる血管内焼灼術や血管内塞栓術といったカテーテル治療を主体として行っている診療科ではないため、他の血管外科、心臓血管外科、循環器内科と比較するとカテーテル手技の経験が少ない傾向にあります。
ただし、クモの巣状静脈瘤など皮膚の美容上の問題に対する処置には経験が多く、「皮膚照射レーザー治療」を行なっている施設もあります。
そのため、下肢静脈瘤の治療だけでなく、治療後の美容面でもこだわりのある方には、下肢静脈瘤の治療を行なっている形成外科や皮膚科の受診をおすすめすることもあります。
循環器内科で下肢静脈瘤の治療を受けるメリット
前述の通り、複数の診療科において下肢静脈瘤の治療を行っていますが、循環器内科で下肢静脈瘤の治療を受けることは以下のようなメリットがあります。
カテーテル治療に対する治療実績や経験が豊富
循環器内科は、心臓や腎臓、下肢などの血管に対して全ての診療科の中で最もカテーテル治療を行っている診療科の1つになります。
とくに心臓のカテーテル治療は非常に繊細な技術が要求されるため、カテーテル手技を非常に得意としている医師が多く、外科系の診療科の医師よりも、カテーテルを用いた治療の実績や経験が豊富です。
治療前後のリスクマネジメントが可能
下肢静脈瘤のカテーテル治療後や弾性ストッキング着用後は、心臓に還る血液の量が増えるため、元々心臓に関する持病のある患者さまの場合、一時的な心不全を起こすリスクがあります。
そのため、高度に心臓に負担がかかっている方への下肢静脈瘤治療は非常に慎重になる必要があります。
また、心臓になんらかの不安を抱えている方についても、治療後の循環器的な観察は重要になります。
心不全など心臓疾患に対する管理は、循環器内科の専門分野であるため、元々心臓に持病のある患者さまは、より安心して下肢静脈瘤の治療を受けることができます。
心臓や腎臓に関する病気の早期発見
下肢静脈瘤の症状の1つである「浮腫」は、心臓や腎臓など内臓疾患に関する病気の兆候ともなり得ます。
例えば足の浮腫だけでなく、動機や息切れ、食欲の低下などがある場合は心不全の疑いもあるでしょう。
そのため、全身の状態を内科的な側面でも診察を行える「循環器内科」を受診することで、下肢静脈瘤以外の病気の早期発見につながるケースもあります。
下肢静脈瘤の病院・クリニック選びのポイント
下肢静脈瘤の治療を行う病院・クリニックの中でいくつか候補がある場合、どのような判断基準で選べば良いかポイントを紹介します。
紹介するのはあくまでも目安となりますので、受診を検討中の医療機関で治療を受けたことのある知人への話や、かかりつけ医への相談、ホームページなどの情報を参照し、下肢静脈瘤の治療をどのように行っているかを事前に確認することが大切です。
下肢静脈瘤のそれぞれのタイプに合わせた治療方法を行える医療機関(病院・クリニック)であるかどうか
下肢静脈瘤は、原因や症状によっていくつかのタイプに分類され、それぞれのタイプや患者さまの身体の状態に合わせた治療方法の選択が必要となります。
治療を必要とせず経過観察になるタイプや、カテーテル治療や外科手術が必要になるものまで多岐に渡ります。
特に注意が必要なのは、現在の下肢静脈瘤治療の主流となっているカテーテル治療(レーザー、高周波、グルー治療)は、「下肢静脈瘤に対する血管内治療の実施基準」を満たした実施施設および実施医しか行うことはできません。
下肢静脈瘤実施管理委員会のホームページ(https://www.jevlt.org/ja/application/beadroll.html)で確認することができますのでご確認することをお勧め致します。
下肢静脈瘤の治療実績や症例数が一定数以上あるかどうか
ホームページで下肢静脈瘤の治療件数・実績や実施頻度を確認するのが良いでしょう。
年に数件しか行っていないような施設は、下肢静脈瘤治療の経験が少ない可能性があります。
また、治療件数が多すぎる施設も問題がある場合があります。
「不適切治療」といわれる治療の必要のない患者に手術を行う施設が問題になっており、症状のない足に治療を勧められた場合には、主治医にどうして治療が必要なのかを良く聞くことと、納得できない場合には、その日に治療日を決めないことが大切です。
受診する医療機関を検討する際は、最新の下肢静脈瘤の診療状況だけでなく、医師の経歴や実績なども併せて確認することが大切になります。
持病のある場合に、安心して治療を受けられる医療機関かどうか
心不全や心筋梗塞、弁膜症を有する方は、下肢静脈瘤治療により心臓に一時的に負担がかかる場合があります。
また、高血圧を有する方でも、心臓の動きが悪くなっている場合があり、下肢静脈瘤治療には注意が必要です。このような場合には、循環器内科的な管理を行える医療機関を選択することが大切です。
︎まとめ
下肢静脈瘤の治療を主に行っているのは血管外科や心臓血管外科、循環器内科、皮膚科、形成外科ですが、医療機関を選ぶ上で大切なのは、下肢静脈瘤治療の主流であるカテーテル治療(血管内焼灼術、血管内塞栓術)に精通しているかどうかもっとも大切な観点であり、他に外科的治療を行う体制にあるかどうか、特殊な病態の場合などには大学病院などへの紹介を行っているかどうかも選択の基準に挙げられます。
また、自覚症状が下肢静脈瘤ではなかった場合などには適切な診療や他院への紹介をしてくれるかどうかも大切です。
下肢静脈瘤は良性の病気であり、治療を急ぐ必要はありませんので、じっくりと安心して治療を受けられる医療機関を選ぶことように心がけましょう。
この記事が下肢静脈瘤の症状でお悩みの方にとって、医療機関選びの参考となれば幸いです。
当院では、「カテーテル治療」および「心臓・血管」の専門医による下肢静脈瘤の日帰り治療を提供しております。足の血管でお悩みの方は、東京都台東区「浅草橋駅」徒歩1分の「あさくさ橋心臓と血管のクリニック」までご相談ください。
当院の下肢静脈瘤が
選ばれる理由
Point
01
下肢静脈瘤の
専門医師による日帰り手術
当クリニック院長は、学会でも末梢血管のライブデモンストレーションを行うなど、下肢静脈瘤治療の基本となるカテーテル治療を得意としておりますので、ご安心してお受けください。
Point
02
痛みが少ない治療
下肢静脈瘤治療では、局所麻酔を効かせた状態で行いますので、術中に痛みを感じることはありません。麻酔を打つ際にチクッとした痛みを感じる程度です。
Point
03
土日も診療・治療実施
当クリニックでは、土日も診察・治療を実施しております。忙しくて平日の受診が難しい方も仕事などへの影響を最低限に抑えて通院いただくことができます。
Point
04
治療は保険適用
下肢静脈瘤の治療では、すべて保険が適用されます。さらに高額療養費制度や限度額認定証を提示することによって費用負担をさらに抑えることも可能です。
Point
05
症状に合わせて
複数の術式から治療法を選択
一言に下肢静脈瘤といっても、下肢静脈瘤には複数の種類があり、下肢静脈瘤の種類に応じて治療法が異なります。当院ではあらゆる治療に対応し、種類に応じて適した治療法のご提案が可能です。
【記事監修】
あさくさ橋心臓と血管のクリニック
院長 高橋 保裕
下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医(https://www.jevlt.org/ja/)
循環器専門医
心血管カテーテル治療専門医
開院前に勤務していた大学病院や地域中核病院では、1万件近い心臓や末梢血管のカテーテル治療に携わり、様々な症例に対して豊富な治療経験を持ちます。
近年では「ライブデモンストレーションのライブオペレーター」として各学会に招待され、カテーテル治療を学ぶ多くの医師の前で治療を行うなど、技術指導者としても活動しています。
「患者様を自分のたいせつな家族と思って診療する」をモットーに、下肢静脈瘤日帰り手術(カテーテル治療)や一般循環器診療を行っております。